山幸と豊玉姫 /20231009
隼人族の祖である海幸は《南九州勢》である。
本伝と複数の一書からなる日本書紀は、神の象徴する地域が逸話ごとに異なることがある。例えば、国譲り神話の大己貴は、本伝が唐古鍵の大己貴、一書第一が纏向の大己貴、一書第二が山陰の大己貴である。
よって海幸と山幸も、逸話によって異なる地域を象徴する可能性がある。第十段では、一書第二以外の逸話の海幸は、南九州勢ではないかもしれない。その可能性を残しつつ推測するに、
山幸が象徴する地域のひとつは《紀伊国》である。
海幸山幸の物語で重要なポイントは《豊玉姫の降嫁》だろう。
海神の娘である豊玉姫は、おそらくヤマト大王の継承権を持つ海神族の女性だ。当時は女系継承であり、大王には継承権を持つ女性の近親者が就任した。
5世紀前期の紀伊国には名草戸畔がいた。
豊鍬入姫巡歴が記す第4の元伊勢が《木乃国奈久佐浜宮》であることから、名草戸畔は天照を祭祀しており、ヤマト大王の継承権を持っていたと思われる。
おそらく名草戸畔は豊玉姫の娘、あるいは孫娘である。
余談だが、豊玉姫のずっと後の子孫が、藤原不比等の養女になり聖武[45]を生んだ宮子だろう。
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