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素人が高志の昔を探ってみる ~神代から古墳時代まで~

伊勢は邇藝速日を祀っていた

なにか見えてくるのではと思い、先代旧事本紀の国造本紀から神武[1]と崇神[10]の頃に定められた国造をピックアップしてみた。


―――神武(橿原朝)―――

大倭国造:以椎根津彦命 初為大倭國造
葛城國造:以剱根命 初為葛城國造
凡河内國造:以彦己曾保理命 為凡河内國造
山城國造:阿多根命 為山代國造
伊勢國造:以天降天牟久怒命 孫天日鷲 勅定賜國造
素賀國造:始定天下時従侍来人名 美志印命 定賜國造/遠江国東部
紀伊國造:神皇産霊命 五世孫天道根命 定賜國造
宇佐國造:髙魂尊 孫宇佐都彦命 定賜國造
津島縣直:髙魂尊 五世孫健弥己己命 改為直

素賀(遠江国東部)について。
『伊勢国風土記』逸文によれば美志印は、神武の命を受けた天日別により伊勢から追われた伊勢津彦の子。
天日別は、伊勢国造の天日鷲(忌部氏祖)と同一とする説が有力。

美志印の「美志」はウマシとも読める。
そして伊勢津彦と饒速日を同一視する説がある。

Wikipedia「素賀国造」 2021年3月

またその他別名(櫛玉命)や世代関係(神武一世代前)など諸要素からも伊勢津彦こそ邇芸速日命と同神とされ、東国へ逃亡したのは実際は伊勢津彦の子に当たる神狭命とされる

成務朝に定められた遠淡海国造(遠江国西部)は伊香色雄の子の印岐美。
名前を逆さにすると「美岐印」。
「岐」は、山と音符支(シ)→(キ)とから成る文字。美志印と同一人物か?

漢字ペディア 

遠淡海國造
 志賀髙穴穂朝(成務) 以物部連祖伊香色雄命 兒印岐美命 定賜國造

伊勢津彦は物部氏で、伊勢は饒速日勢の支配地だったと考えられる。

―――崇神(瑞籬朝)―――

知知夫國造:八意思金命十世孫知知夫彦定賜國造 拝祠大神/武蔵国秩父
科野國造:神八井耳命 孫建五百建命 定賜國造
久比岐國造:大和県同祖御戈命 定賜國造
高志深江國造:道君同祖素都乃奈美留命 定賜國造
出雲國造:以天穂日命十一世 孫宇迦都久怒 定賜國造
石見國造:紀伊國造同祖蔭佐奈朝命 兒大屋古命 定賜國造
吉備中縣國造:神魂命 十世孫明石彦 定賜國造
波久岐國造:阿岐國造同祖金波佐彦 孫豊玉根命 定賜國造/周防国
波多國造:天韓襲命 依神教云 定賜國造/土佐国幡多
火國造:大分國造同祖志貴多奈彦命 兒遅男江命 定賜國造
阿蘓國造:火國造同祖神八井耳命 孫速瓶玉命 定賜國造

波久岐(周防国)について。
周防(山口県南部)は瀬戸内航路の西端。
同祖とされる阿岐國造(安芸国)国造は天湯津彦の五世孫の飽速玉。
天湯津彦も飽速玉も記紀には登場しないが、大軍事力を保有する氏族らしい。

阿岐國造
 志賀髙穴穂朝 天湯津彦命 五世孫飽速玉命 定賜國造

速谷神社 安芸国の祖神

──略── そしてこのうちの八国は、阿岐国造と同族の人物が国の長として派遣されていたのです。
阿尺国  思(太)国 伊久国  染羽国
信夫国  佐渡国  波久岐国 怒麻国
 阿尺国から信夫国までの五国は蝦夷地と呼ばれた東北にあり、現在の福島県北中部から宮城県南部の地域です。また佐渡国は新潟県の佐渡島、怒麻国は愛媛県北部にあり、波久岐国は山口県にあったと考えられています。 ──略──

阿尺国=郡山盆地、思国=?、伊久国=陸奥の陸前(宮城)南部、染羽国=陸奥磐城(福島浜通り)、信夫国=福島盆地。いずれも成務[13]朝の任命。
蝦夷五ヵ国を任せられるほどの軍事力を持つ在地勢力なのだろう。

―――まとめ―――

知知夫(武蔵国秩父)と波多(土佐国幡多)以外は、日本書紀が記す倭国大乱の様子を反映した地域や人物が並んでいるようだ。

武蔵秩父と土佐幡多をここに列する理由は何だろうか?
謎が増えた。

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